第2回 東三河サイエンスカフェ 記録
2007年10月18日 開催


身近にある物理
−電気製品の中の物理−
山畑 真樹 先生
司会挨拶
司会より、非常時の対応等諸注意、本カフェのすすめ方説明、
ゲストスピーカーの紹介を行ないました。
なお、開始前には、
前回カフェの模様を紹介していただいたティーズさんの番組のビデオを紹介しました。
【18:30開始】
基調スピーチ
山畑先生は、手製のコマを用いた実演を含め、
15分ほどのお話しをしてくださいました。
以下は、同スピーチの内容をまとめたものです。
手製コマの写真は、先生よりご提供いただいたもので、
著作権は、山畑先生にあります。
挨拶。
身近にある物理ということで、
身近にあるものを題材に、物理について考えてみたい、
話題提供をできればと思っています。
扇風機ごしにテレビ画面をみていて、
扇風機の羽根が徐々に遅くなって、
いったん止まって、さらに逆回転していくように見える、
という経験をしたことはありませんか。
また、車のCMで、走っている車のタイヤが、
止まっているようにうつっているのを見たことはありませんか。
さて、案内のパンフレットにも掲載した、
このコマですが、CDにビー玉をつけたものです。
CDには、コンピュータで描いた絵をはってあります。
それでは、みなさん、前の方に集まってください。
これを回すと、ほら、柄が一瞬とまって、さらに、反対に回っていきますよ。
どうしてこんなことがおこるんでしょうか。
実は、日光の下では、こういう風には見えないんです。
だから、学校の授業では日差しのあるところと、
そうでないところで、実演することができて、そのちがいがよくわかります。
みなさん、「ベンハムのコマ」というのをご存じでしょうか。
このようにコマの片側半分だけ黒く塗って、
あとの半分には少し線のはいっているものなのですが、
このベンハムのコマをまわすと、このようにちがった色が見えてきます。
(ビデオ(Windows Media Player 用:430KB)へ)
次に、もっとよくわかるように、ストロボをもってきました。
今、1秒間に140回の点滅しています。
蛍光灯を消すと、ほら、はっきり見えますね。
一瞬止まるように見えたときが、ちょうど点滅と回転が合っているときです。
したがって、一定の速度で回すと常に止まって見えるはずですから、
今度はモーターを用意してきました。
このモーターでコマを一定速度でまわすと、
ずっと止まって見えるはずです。
やってみましょう。
うーん、失敗ですね。
このコマ、軸がずれてますね。
まあ、こうした実験は、失敗してこそわかることもありますから。
さて、今の実験の原理を説明しましょう。
この蛍光灯は、交流の電気で光ってます。
交流の発電というのは、ある磁場のなかにコイルを入れて回します。
そうすると、電磁誘導という現象がおこり、誘導起電力というのがおこります。
これが交流の電力です。
この東三河は60ヘルツです。
1秒間に60回振動する波です。
乾電池のような直流というのは、電子が一方向にながれ、電気として働きます。
交流は、電子は動いていません。
電線の媒質を振動が伝わってくるものです。
60ヘルツだと、1秒間に60回振動しますが、
その結果として、蛍光灯は1秒間に120回、ついたり消えたりしてるわけです。
そのため、
コマの模様のちょうど黒い部分と蛍光灯の点滅が合ったとき、
その模様の部分だけが、止まっているように見えるのです。
車のCMでタイヤが回って、とまって、と見えるのは、
実は、ライトをあてて、撮影しているのですね。
それで、そのライトの周波数にあったとき、回転が止まって見えるのです。
インバータというのをご存じですか。
インバータの蛍光灯では、このような現象が起こりません。
インバータというのは、電源からの交流の電気をいったん直流にして、
さらに、十倍ぐらい、
だから、600ヘルツぐらいの交流にしてから蛍光灯に与えています。
蛍光灯は、電気がきて明かりがつくときに、振動がある一定回数こないとつかない、
という性質があるものですから、
インバータは十倍はやく明かりがつくようにしてあるわけです。
そのため、この実験は、うまくいかないのです。
十倍細かく模様を描くか、十倍はやく回さないといけないのです。
このように蛍光灯ひとつでも、物理のおもしろい話しがあります。
身の回りの電化製品で、もっといろいろな物理現象が見られます。
後半の議論のなかで、そうしたお話しもできればと思っています。
ご静聴ありがとうございました。
コーヒーブレイク
ここで、参加者全員に飲み物とお菓子のサービスをしました。
山畑先生が、コーヒーブレイクのサービス時間用に、
手回し発電機とリモコンを使った実演をしてくださいました。
以下、先生の説明の概説です。
これは、手で、このハンドルをまわすと発電できるというものです。
これに似たもので、防災用のラジオをお持ちの方もいらっしゃると思います。
先ほどもいいましたが、磁界のなかでコイルをまわすと、交流の電気が発生します。
これは、手でコイルをまわして発電しているわけです。
原発や火力発電所なども、原理はまったく同じです。
リモコンはどうして使えるのかご存知ですか。
赤外線がでています。
目で見ても見えないですね。
これをデジカメでみると、ほら、白く光っているのが見えますね。
これが赤外線で、これを機械側のCCDで受け取っているわけです。
デジカメもCCDで映像を取り込んでいますので、
このように白く見えるのです。
語らい
基調スピーチをうけて、
55分ほど、参加者一同の語らい(議論)の時間をもちました。
インバータという仕組みは、蛍光灯以外にも使われているのでしょうか。
おもしろい例では、野球のバッティング(ピッチング?)マシンに使われています。
インバータ・モーターというもので、ボールの速度を変えるのに使います。
ほかにもたくさんあると思います。
みなさんの身近にあるものでいえば、
インバータ・エアコンが一番ではないでしょうか。
急速に冷房するのに、インバータをつかって急速にファンをまわす、
といったことをやっています。
ドップラー効果を利用したスピード測定器(オービス?)というのは、
後ろからでも正しい速度をはかれるのでしょうか。
コマの模様がコマ送りのように見える実験をみていて、
思いだしたことがあります。
事故で脳に損傷をうけて、以降、まわりのものがすべてコマ送りのように見える、
という症例があるそうです。
レコードプレーヤーの回る台の側面についていた凸凹も、
回転数を確認するためについていたのかなぁ、と思いだしました。
ベンハムのコマで、黒と緑と茶色に見えるのが、とても不思議でした。
これは結局どうしてなんですか。
簡単にいってしまうと、目の錯覚です。
青にも見えると思います。
脳の段階で錯覚が生じているようです。
素朴な疑問なのですが、電波はどうして目に見えないのでしょうか。
野球のスピードガンと速度取締りのオービスというのは、
おなじものなんでしょうか。
使用している波長は違うかもしれませんが、原理はまったく同じです。
それから、先ほどあった、後ろからは、という質問ですが、
後ろからも速度ははかれます。ただ、多少の誤差があるようです。
うちの部員が投げているのをスピードガンではかると、
後ろからの、離れていくボールのスピードは、
向かってくるボールとちがって、少し遅いめの数字がでます。
最近、IH炊飯器を購入したのですが、
とても不味いご飯がたきあがってしまいます。
まず、IHというのは何で、なぜ、不味いのでしょうか。
高校生の頃は、物理が大嫌いでしたが、今日のお話しのような授業、
今日の先生のような先生だったら、ちがっていたかなぁと思っています。
回っているコマを見ていると、模様が止まった後、
じわじわっと、まるで生き物のように動きだすのが、興味深かったです。
さきほど、錯覚というお話しがありましたが、
人間の感覚と、物理のルールにそった「決まった」現象との、
そのギャップがおもしろいと思います。
冷蔵庫が振動しますねぇ。
あの振動もあるレベルを超えると、急に振動し始めるような印象があるのですが、
そのあたりについての物理的な見方があれば、お話しいただきたいと思います。
まずもって、大人の方があつまって、
こういう話題で話しをしている、ということが素晴らしいと思います。
先ほどもありましたが、
電気や電波といった目に見えないものが身のまわりにたくさんあって、
そうしたものの恩恵をたくさんうけているということを、
改めて実感しているところです。
もともと理科は大嫌いで、特に、高校時代、物理は選択だったので、
ほとんど記憶もないのですが、
今日のお話しなどをうかがっていて、
日常生活のなかで、こんなにも身近にあって、重要なものなんだ、
ということを感じています。
こうした便利さというのは、本当に人間のためになっているのでしょうか。
環境問題などを重ね合わせて考えると、ただ便利というだけでは、
という感想をもちます。
IHというのは、Induction Heating、電磁誘導加熱のことです。
炊飯器の釜の横にコイルをおいて、そこにできる磁力で、うず電流を起こし、
それで釜自体を発熱させる、というのがIH炊飯器の仕組みです。
IHクッキングヒーターも同じ原理です。
だから、IHクッキングヒーターでは、土鍋は使えないんですね。
金属の鍋でないと、発熱しませんから。
IH炊飯器で炊いたごはんがおいしいかどうかは、
IHの機能の部分だけでなく、
水加減とか、お米の向き不向きとかもあるかもしれませんね。
冷蔵庫の振動の件は、たまたま周囲にあるものと共振するところがあって、
その周波数になったところで、大きな振動音がでるのではないでしょうか。
共振の例としては、ふりこの共振実験、テレビ・ラジオの受信、
ギターの調弦、タコマ橋の崩落、などがあります。
さきほどどなたかがおっしゃっていた、
ほほえむとシャッターを切るデジカメ、というのは、
画像のなかから、顔を検出して、その顔の口元をさがし、
その口角があがったときに、シャッターを切るようにしているんですね。
デジカメは、もともと画像に対していろいろな処理をしていますから、
口角の変化をチェックするくらいは、さほど時間のかかる処理ではなく、
問題なく使える技術になっています。
電波を目で見たい、というのは、説明むずかしいですね。
強い電磁波というのは、からだによくないと聞いたことがありますが。
たしかに、からだによいとは考えにくいですね。
ただ、例えば、携帯電話で実際に心臓ペースメーカーが止まった、
という例は、まだ報告されていないようです。
なにより、どんな電化製品からも、電磁波はでていて、
例えば、よくテレビは離れて見なさい、目に悪いから、と注意しますけど、
近くにいると、電磁波も浴びているわけで、離れることは、
そういう効果もあります。
過敏になる必要はないと思いますが、電磁波が出ていて、
リスクがあるということは知っておくべきでしょう。
電子レンジはどうですか。
電子レンジの加熱は、マグネトロンというマイクロ波によるものです。
電子レンジで面白い話しをしましょう。
電子レンジに氷だけをいれても、融けません。
水のはいったコップに氷をいれたときは、すぐに融けてしまいます。
さて、なぜでしょう……。
これは、氷の状態では、マグネトロンをほとんど吸収しない、
水の分子が振動して発熱しない、からです。
携帯電話の電磁波は、着信時が一番強いようです。
携帯電話をAMラジオのそばにおいていると、
電話がかかってきて、着信音がなる直前に、ラジオに雑音がはいります。
これが、携帯電話では一番強い電磁波のようです。
人体への影響でいえば、眼球の水晶体が一番影響を受けやすい、
という話しを聞いたことがありますね。
司会挨拶
司会より、アンケート記入の依頼、同回収、閉会の挨拶を行ないました。
【19:58終了】
付録
本カフェにでてきた、
いくつかの実験・話題に関する詳しい資料へのリンクをあげておきます。
いずれも、ほかにたくさん資料がありました。
ここでは、それぞれひとつだけにしておきます。
- ベンハムのこま:
近くの公共施設ということで、名古屋市科学館さんのものです。
石田恵子さん:展示ガイド「ベンハムの実験」(名古屋市科学館)
- ふりこの共振実験:
公的機関で、ビデオ教材ということで、
(独)科学技術振興機構「理科ネットワーク<一般公開版>」さんのものです。
ふりこの共振(きょうしん)(JST理科ネットワーク)
- タコマ橋の崩落:
橋の建設から開通式、崩落までの様子がまとめられたビデオが公開されています。
Prelinger Archives さんのものです。
Stillman Fires Collection: Tacoma Fire Dept(Prelinger Archives)