第6回 東三河サイエンスカフェ 記録
2008年1月17日 開催


パラボラからカーブ(曲線)を眺めよう!
−アルキメデスの時代から現代社会の利用(太陽光など)へ−
鈴木 康真 先生
司会挨拶
司会より、非常時の対応等諸注意、本カフェのすすめ方説明、
ゲストスピーカーの紹介を行ないました。
なお、開始前には、
クリスマスから新年にかけてのホームページのロゴを紹介しました。
【18:30開始】
基調スピーチ
鈴木先生は、パワーポイントを使用しながら、
塗り絵など参加者各自が行なう実習を含め、
35分ほどのお話しをしてくださいました。
以下は、同スピーチの内容をまとめたものです。
スライド資料(図表等)は、先生よりご提供いただいたものです。
これらスライドの著作権は、鈴木先生にあります。
当日のスライド資料は、このほかにもたくさんありましたが、
その一部のみ掲載しております。
挨拶。
はじめにビデオを見ていただきたいと思います。
今年、はじめて野球部の顧問をしているのですが、
打球にしろ、投げたボールにしろ、回転しながら、放物運動をしています。
放物線を描いて飛んでいきます。
これは、ソーラーライターというものです。
実物をもってきましたので、お回しします。
このお皿の部分が放物線の形状になっています。
これもビデオを用意してきましたので、ご覧ください。
ソーラーライターの光の集まるところに、
紙をまるめたものをつけてあります。
つい先日、昼の11時半ごろに行なったのですが、
もう煙があがってきていますね。
たったこれだけの大きさのお皿ですが、ライターとしては十分ですね。
アウトドアグッズのお店に売っています。
こちらのビデオは、午後3時ごろですね。
今度はタバコですね。
本当は校内禁煙ですから、ダメなんですけど、今回は特別です。
太陽光の角度にあわせて、お皿を傾けているのがわかると思います。
太陽光発電でも、
太陽光を追跡するように、角度をかえていくシステムがありますね。
このように放物線というのは、身近なところにたくさん見られます。
さきほどのボールの放物線、パラボラアンテナ、
ポーラースパークライター、クッカーなどですね。
オーストラリアでは、高さ100Mの位置に発電システムを設置し、
地面にたくさんのガラスパネルをおいて、集光して発電する、
といったことが行なわれているようです。
少し数学的な解説をします。
中学、高校の数学では、 y = x2 というのが、
放物線の式という説明をします。
ここに示したのも、放物線を表す式です。
y = x2/4p というものですが、
焦点 F = (0,p) という点と、
準線 y = -p という直線 L をとって、
準線 L と焦点 F とからの距離が等しい点をつないだものが、
放物線ということになります。
さきほどのライターで光が集まる原理ですが、
この図のように、太陽光のような軸に平行な直線が入ってくると、
ここに二等辺三角形ができますので、
どの光も必ず焦点に集まってくることになります。
この図と証明は、お手元の資料にものせてあります。
ただ、この証明は少しややこしいので、
実際に図を用いてやってみようと思います。
お手元の資料の1ページ目ですが、
上から太陽光がはいってきます。
放物線上の点は、準線と焦点とから同じ距離になるのですから、
太陽光が準線と交わる点、すなわち、矢印の先の点を、
焦点 F に重なるように折っていきます。
そうしてできる折り目を、順につないでいくと、放物線が描かれます。
このようにできあがる線は、包絡線といったりもします。
はさみで切った方がやりやすいかもしれません。
はさみも用意していただいてますので、使ってください。
……。
光が放物線の面で反射して、焦点に集まってくる、ということがわかると思います。
光が集まってきて、ライターのように火がつくわけです。
だから焦げる点、焦点といいますし、
カメラのフォーカス(Focus)で、点 F といいます。
今書いていただいた放物線を立体化すると、この図のようになります。
これの底の方で切り取ると、パラボラアンテナや、
さきほどのソーラーライターのお皿の形になって、焦点のところで火がつくわけです。
最近は使い勝手のよいソフトウェアがでてきて、
この図のようにコンピュータで放物面を描いて、
いろいろな方向からその形状を眺めることが簡単にできます。
今度は塗り絵で放物線を描いていきたいと思います。
これも配布した資料にあります。
放物線は、準線と焦点から等距離にある点の集まりですから、
このようにあらかじめ等間隔の平行線と、同じく等間隔の同心円を描いておけば、
ナナメに隣り合うところを順に塗っていくだけで、放物線を描くことができます。
……。
一本だけではさみしいので、色を変えて次々に塗っていくと、
デザインとしてもおもしろいものができあがります。
この図のように、焦点に光が集まるという性質がありますから、
身近なところでは、パラボラアンテナや、
反対に光を直進させるために、サーチライト、
車のライトなどにも使われています。
次は、楕円について見ていきたいと思います。
17世紀の研究者で、ケプラーという人が発見したものですが、
惑星は楕円軌道を回っています。
実は、惑星の軌道が楕円であることを見つけたのは、ケプラーではなく、
ケプラーの師匠にあたる人で、その人の長年にわたって収集したデータを、
きちんと説明したのがケプラーということです。
惑星の軌道も最初は円軌道と思われていたのですが、
このおもちゃのように、しっかり回そうとすると、
回転の軸が少しずれて、このように楕円になるんですね。
楕円の性質としては、放物線の焦点にあたるものがふたつあって、
その2点からの距離が一定な点のあつまりが楕円ということになります。
一般に高校の数学の授業では、このような図を示して、式を説明するのですが、
わたしは、このような道具をもちだしまして、
この2点を焦点とする楕円は、このようなものになる、という説明をします。
ただ、このような道具を用いましても、やはり生徒は見ているだけで、
理解が深まりませんので、さきほどのソフトウェアを使って、
……、
このように、軌道上を動く惑星の動きなどを見せたりしています。
この楕円についても、塗り絵を用意してきたのですが、
時間の関係もありますので、
あとで時間があれば、ということにさせていただきたいと思います。
楕円の塗り絵を行ないますと、この図のようにできあがります。
二次曲線というのは、円錐をまさに上から見た図なんですね。
今見ていただいた塗り絵なども、円錐を真上から見たものになります。
また、その円錐を横や斜めから切断することを考えますと、
実は、被服、洋服をつくるのに関連があるんですね。
この本は、本校の生活デザイン科の先生から借りてきたんですが、
袖などは円筒や円錐の形になっていますので、その断面は楕円になるんですね。
こうしたあたりも、さきほどのソフトウェアで見ますとよくわかります。
……。
円錐に断面を入れるんですね。
母線に平行な断面をいれますと、切断面は放物線になりますし、
縦軸に平行に切りますと、双曲線になります。
円錐の形の塗り絵を作って、上から見ますと、さきほどの普通の塗り絵になります。
こちらの円錐は、少し工夫をしてあって、上からグシャグシャと押しつぶすと、
たしかに楕円と双曲線があらわれます。
このように、楽しみながら、二次曲線の勉強をしてもらえたらと思って、
授業も行なっています。
こちらは、極座標のお話しです。
アルキメデスのらせん、というものです。
式でいいますと、 r = aθ というものです。
これも同じように塗り絵にしますと、この図のようになります。
r = θ と r = -θ をまとめて塗り絵にしますと、
この図のように、蚊取り線香のようになるんですね。
このように二次曲線は、身近にたくさんあります。
先ほども少し話しましたが、洋服の袖の肩口の曲線は、
円錐を斜めにカットした形、楕円なのですが、切り開くとサインカーブになります。
実は、この図を縦にしたのが神戸タワーなんですね。
今日は、阪神淡路大震災の日ですね。
立体裁断の型紙は、円筒形を斜めにカットしたものです。
これが、生活デザイン科の先生にお借りした洋服の型紙ですが、
この袖の部分がサインカーブになっています。
これをつなぐと、円筒になり、楕円になります。
こちらは教科書の表紙なんですが、
らせん階段がサインカーブになっていますよ、という例ですね。
このように、身近なところに、実は数学の曲線が用いられている、見られる、
ということを知っていただければと思います。
ご静聴ありがとうございました。
コーヒーブレイク
先生、ここで時間をとって、ご用意いただいた塗り絵をもう少ししませんか。
コーヒーをサービスしてしまうと、塗り絵をしにくいので、
コーヒーをお配りする前に、ここで、どれか塗り絵をしてみましょう。

それでは、楕円と双曲線の塗り絵をやってみましょう。
……。
先生、質問があります。
楕円はわかるんです。
ふたつの焦点からの距離の和が一定ですね。
双曲線の方がよく分からないので、教えてください。
ふたつの焦点との距離の差が一定なのが双曲線です。
学校でも、一コマはこういう授業をやりたいですね。
今日取り上げた三つの曲線、放物線、楕円、双曲線は、
基本の基本ですので、こういう形で、楽しく、
みっちりとやってあげたいですね。
ここで、参加者全員に飲み物とお菓子のサービスをしました。
語らい
基調スピーチと塗り絵実習をうけて、
30分ほど、参加者一同の語らい(議論)の時間をもちました。
以下は、語らいで出された意見などをまとめたものです。
高校時代に数学の先生がおもしろくて、以来、数学に興味を持ち続け、
高校の数学の先生になりました。
このような楽しい授業を行なうことで、
生徒の数学に対する興味を触発できればと思います。
見せていただいたソフトウェアの動きの速さに感心しました。
そのソフトウェア、GRAPES だろうと思うのですが、
その2次元版を使っています。
3次元版を初めて見せていただいたので、
さっそく使ってみたいと思います。
楕円は、閉じた曲線ですね。
対して、双曲線やサインカーブは閉じていなくて、
ずっと続いていきますね。
どちらが自然なのでしょうか。
閉じていないのが自然で、閉じている方は、たまたま閉じている、
と考えるべきなのでしょうか。
むずかしいですね。
サインカーブも、実は円をまわっていて、単振動しているものですし…。
袖のカーブが数式で表せるというのが、すごく身近で、おもしろかったです。
洋服の裁縫をするときも、サインカーブとか知らずに、
ここで何センチ、ここで何センチといった要領で、カーブをつくっていました。
生活デザイン科の先生の聞いてきたのですが、
サインカーブで描かれた型紙は一応あるんですが、
実際には採寸にあわせて補正、修正をするそうです。
袖以外のところもサインカーブなんですか。
胴回りやほかの部分もカーブになるのですが、
必ずしもサインカーブというわけではないようです。
むしろ、放物線の組合せのように見える型紙もありました。
あみものでも目の数をきちんと数えて、カーブをつくりだします。
円をかたむけていくと楕円になるというお話しがありましたが、
放物線が重なったような感じを受けるのですが、どうですか。
ゴムひもでできた円を引っ張るようなイメージをもってください。
放物線ではなく、楕円になります。
お話しをうかがっていて、
あらためて数学がいろいろな学問の一番ではないかなと思いました。
一般建築では、直線が基本で、カーブというのはあまり用いられないんですね。
反面、仕事でとったアンケートをグラフ処理をしますと、
放物線によくのっかってきます。
そうした意味では、今日のお話しのあったとおり、
身近なところにカーブがあると思います。
このように身近なところに多くのカーブがあるというのは、
先人たちの匠の技なのかなあ、と思います。
歳月をかけて、多くの経験のなかで積み上げられてきたもののように思えます。
数学関係の3回のカフェで、数学がたんに計算で解くだけのものではなくて、
何か大きなつながりのあるものに思えるようになってきました。
また、コンピュータを使った作図は、スピードも速くてすごくよいのですが、
それ以上に、手書きで行なうこの塗り絵がよいですね。
まず、ソーラーライターは、
いったいいくらぐらいのものなのかなぁと興味をもちました。
大きな災害などがおきたときに、非常に有用なものだろう、と。
それと、この円錐をグシャッとつぶせるのが最高ですね。
この円錐をどうやってつくるのか、興味がわいてきました。
また、シュタイナー教育との共通項も感じられました。
手作業の大事さですね。
回覧していただいたパスカルの三角形の塗り絵ですが、
なにか曼荼羅のようなおもしろいものですね。
手元の配付資料を見ますと、数式のものと、手で塗りつぶしたものと、
とても同じ数学とは思えないものが、ふたつ残っています。
目に見える数字と、形になって見えるものと、その違いがよくわかって、
とてもおもしろかったです。
やはり、手を動かすのがとても楽しいですね。
いつもは数学が専門の人の集まりに参加することが多く、
このようにさまざまな分野の人、
とりわけ、数学が苦手だという人もいらっしゃるなかで、
こういう議論ができることがすごく楽しいものだと感じています。
本カフェの趣旨をみごとに言い表していただいたように思います。
どこかで使わせていただきます。
今日は、数字を楽しむ、数楽、という感じをもちました。
わたしは、高校時代、数学落ちこぼれていましたので、
数学に苦しむ、数が苦、という方だったのですが、
仕事では、微分方程式などを扱わざるを得ないので、
身近な曲線を日常的に見ています。
モナ・リザの絵を見たときには、美しい曲線だなぁ、
と思ったことを覚えています。
先のフィボナッチ数のお話しを聞けなかったのは残念でした。
高速道路に使われているクロソイド曲線も美しいですし、
実学で、カーブが使われているんだなと思っています。
クロソイド曲線は、ジェットコースターにも使われていまして、
直線部分とカーブする部分をなめらかにつなぐところなどに用いられています。
ただ、積分を駆使した計算になって、ややこしいんですね。
また、お見せしたソフトウェアでも、扱いきれなくて…。
数学は、ただ計算するだけではないんだ、ということが実感できました。
また、塗り絵の実習もあまり上手くできなかったのですが、
脳トレのような感じでした。
プロ野球の打球は、完全な放物線なんですか。
基本的には放物線ですが、ボールの回転や、
風、ドーム球場ではエアコンなどの影響をいくらかはうけます。
放物線や楕円といいますと、工学や天文学というイメージがありましたので、
洋裁のお話しなどに感心しましたし、
逆に、自然界にはどのようなカーブがあるのかなぁと興味がわいてきました。
楕円に関する実験でおもしろいものがあります。
楕円の形をした水槽に水をはって、一方の焦点の位置で、
水面をたたいて波紋をおこしますと、
水槽の壁にぶつかって、はねかえってきた波が、
もう一方の焦点にきれいにあつまるんですね。
ビリヤードの原理というものです。
その実験を二十数年前に見せてもらって、
同じ実験を行なう装置をつくろうと思っているのですが、
なかなか上手くできないんですね。
今日も、その実験をお見せできればと思ったのですが、
時間がとれず上手く準備ができませんでした。
いちおう配付資料の最後のページには、その証明をつけておきました。
司会挨拶
司会より、アンケート記入の依頼、同回収、閉会の挨拶を行ないました。
【20:00終了】
付録
本カフェにでてきた、
いくつかの実習・話題に関する詳しい資料へのリンクをあげておきます。
いずれも、ほかにたくさん資料がありました。
ここでは、それぞれひとつだけにしておきます。
- 楕円ビリヤード:
楕円形のビリヤード台で、玉をついたらどうはねかえるのか。
その軌跡を示すプログラムもあります。
水槽の波紋も、原理はこれと同じです。
高校大学連携教育授業「ビリヤード」(高知工科大学 数学教室 井上昌昭 さん)
- 関数グラフソフト GRAPES:
プレゼンテーションで先生が使われていたソフトウェアです。
さらに、新しいバージョンもでているようです。
関数グラフソフト GRAPES 6.53(大阪教育大学附属高校池田校舎 友田勝久 さん)